インターネットの掲示板や雑誌の記事などで「介護のお仕事ちょっと興味あるけど新人いじめがありそうで恐い」「介護業界はいじめが当たり前の世界ですよ」という文章をよくお見掛けします。
介護の世界で働く過半数以上が女性です。
女性の世界、女性が活躍する現場というだけで何かドロドロした人間関係のイメージがありますよね。
介護の仕事に興味あるけど…入ったばかりで目をつけられていじめの標的にされたらどうしよう…などお考えになられる方もいらっしゃると思います。
さて、今回は「介護職員による新人いじめはあるのか?」についてご紹介します。
おそらく誰もが気になっているこの新人いじめ。介護の世界で数十年働く私の経験も元に触れていきたいと思います。
介護職員による新人いじめの実態を紹介致します。
以下は、実際に私が見聞きしたいじめの現状です。
新人とベテランの意識の違い
仕事が出来るSさんは施設内でもチームリーダーを務めるベテラン介護士。
しかし一つだけ気になる点がありました。
新しくチームに入った人への当たりが強いのです。
たしかにSさんのチームは仕事が出来ます。
直接ご利用者様の命に関わるようなミスが無いのはもちろん、指示漏れもなく報告、連絡、相談もしっかり出来ているなという印象は受けます。
ただ、他の職員に疲労が見えるのです。
表情だけでなくメンタルも疲れているように見えました。
そしてミスを凄く恐がるのです。
Sさんの元で働いている介護士の個別面談の際に話を聞きました。
するとミスをするとSさんが怒鳴るというのです、それも私の目の届かない所で行われていたのです。
他の介護士に話を聞いても同じことを話されていました。
このままでは職員のミスが増える一方だし最悪辞めてしまう、それだけは避けなければならないと思い、Sさんに話を聞きました。
すると「自分も昔はこうやって教えられてきた。だからその教えを守っている」との事でした。
たしかに一昔前までは怒られて育つ、という考え方がありました。
しかし時代は変わりました。
管理者の研修でも言われている通り、トップダウンよりもボトムアップの時代です。
上に立つ人が下にいる人のサポートに回る、といった底上げ方式でなければ今の若い職員は疲れてしまいます。Sさんにはそれを伝えました。
それともう一つ「なぜ私の目の届かない所で怒鳴ったりするのですか?」と問いかけました。Sさんはしばらく黙りました。
そして一言いいました。「その方が管理しやすいからです。新しく入ってきた人こそ力を見せておかないといけない」と今の気持ちを話してくれました。
なるほど、たしかに怒られるかもしれない恐怖感は相手を動かすには一番手っ取り早いです。
歴史を振り返ってみてもそのように統率していた事も分かります。
しかしそれでは他の職員は「やらされているだけ」にしか過ぎません。
主体性が全く見られないチームでは生産性も無く新しいレクリエーションのアイデアなど到底生まれません。
Sさんには「これではSさん自身も疲れてしまうし、チーム全体も疲弊してしまう。違うやり方を探してほしい」と伝えました。
しかしSさんは考えが曲げられず、しばらく経って退職してしまいました。
Sさんなりに責任を感じて働いていたのだが結果「新人いじめ」のように見られてしまって自分を追い詰めてしまった、との事でした。
Sさんに納得出来るような説明が出来なかった私にも責任があると痛感させられました。
クッション言葉ではないですが、もう一言声をかける努力をすれば防げたケースだったと私自身反省しているケースです。
なぜこういったいじめをする介護職員が出てくるのか?
今ご紹介した例はしっかり仕事と向き合った結果こういう手段を選んでしまった例です。
結果を出すための手段だったわけですね。
しかし、中には悪質なケースもあります。
特に仕事もせずに新人に仕事を押し付ける方、自分のやり方と違う事が気に食わず影で文句ばかり言う方。
気に入らない職員を無視する方など様々です。
では、なぜこういった職員が出てくるのでしょうか?
3つのポイントについてご紹介致します。
手段の一つ
まず、先ほどご紹介したケースがこれにあてはまります。
仕事をする上で結果を出さなければならない。一人のミスがチームリーダーの責任になってしまう。ゆえに厳しさでチームをまとめる。
責任を取るのを恐がっているリーダーにありがちな例です。
もちろん介護施設は人の命を預かる場所です。
ミス一つが取り返しのつかない事になる事も分かっています。
全てのミスに叱るのでは無く「ここは失敗してはいけないよ」というポイントをしっかり伝えることが重要かと感じています。
自分の地位を保つため
新人に嫌がらせをする方の中で多いのが、一見理由がなさそうに見えますがそうではありません。
しっかりした理由があります。
その一つとして“人を陥れて自分の地位を保つ”というケースです。
新しく入ってくる新人にその都度「自分の立場が無くなったらどうしよう、自分がいじめられたらどうしよう」という心理が働いてしまう方です。
実は内心とても臆病な方が多いと感じています。
そして自分が築いた立場がなくなってしまうのではないか?
という恐れから相手を攻撃してしまうのです。
仕事に自信が無い、他に胸を張って人に言えるものが無い方はこういった方が多いです。
こういう方は「何でも教えてください」と低姿勢で行くとコロッと態度が変わり人が変わったように対応してくださる事もあります。
簡単に言うと「この人は私に害が無い、安心した」と思われるのでしょうね。
嫉妬
向上心がある方、やる気がある方に見られるのがこのパターンです。
仕事が出来る新人、自分より可愛い女性の新人が入ってくると攻撃的になる傾向があるのがこれです。
上記の二つと重なる部分もあるのでるが“攻撃をする”という事は勝手に自分が危機感を感じているケースがほとんどです。
つまりその人自身に問題があるのです。
今回の“嫉妬”についてもまさにその通りです。
私の方が仕事はできるのになぜ…、私の方が綺麗で人気があるのに…、どうして認めてくれないの、どうして褒めてくれないの?
依存傾向が強い方や、専門的な用語だと“承認欲求”ともいいます。
こういう方は人に認めてもらえない=自分の居場所が無い、と感じてしまいます。
このような嫉妬が強い方はしっかりと上司が褒める、認める。
後輩ならいつも頼りになるなどの姿勢を見せることがトラブル解決の一歩となるケースが多いです。
昔はこうだった
一昔前の介護職の教え方は今とは全く逆の教え方でした。
新人はまずいじめられる、怒られるのが当たり前。
新人に仕事を押し付けて自分は何もしない方ばかりでした。
それもそうですよね。
そういう先輩方もそのような事を経験してきたのですから。
しかしこれでは介護職のイメージも悪くなるし何より人が入ってこないという事もあり研修や介護業界全体がそういう古い体制を無くそうと舵を取り直したのです。
最近は“いじめ”に対して非常に厳しい施設も多いのが現状です。
いじめはなくなっても嫌がらせや、故意のシカトなど、後を絶たないケースはやはり存在します。
ですが、今後年配の方々、若い方も含め一人一人が気を付ければ必ず防げる事なのです。
※いじめについての対策方法などはこちらの記事も参考にご覧ください。
転職する前に転職エージェントにいじめがあるか聞いてみる
いかがだったでしょうか?介護職の新人いじめについてご紹介しました。
ここ最近出来た施設はいじめが無いように感じています。
それは施設側も悪しき風習は断つという考えの所が多いようです。
逆にいじめが多い施設は昔ながら存在している施設に多いように感じています。
もしもこれから介護職を始めてみようかな、と思われているがいたら、施設見学、または施設の体験をさせてもらう、そして人間関係を見てみるのも良いかもしれません。