
介護の仕事をしていると「介護利用者から暴力や暴言って受ける事あるの?」と聞かれる事があります。
サービス種別や介護度が高い低い関係なく、暴言が日常茶飯事と言える施設も珍しくありません。
介護利用者から暴言を吐かれた、暴力を振るわれた際、介護士はどのように対応してきたのでしょうか?
これまでは「介護のプロなのだから上手に受け流して」「何言われても気にしちゃだめよ」「それが普通なのだから」「相手はお客様よ」と、半ば諦めじみた考え方もあります。
介護利用者の暴力や暴言はお客様だから笑って許す、それ含めてのサービスだと認識されてきました。
上司に直訴しても受け入れてもらえない経験をした方も多くいらっしゃいます。
いわば泣き寝入り状態です。
ここ最近だと「介護ハラスメント」という言葉が認識されてきました。
介護現場にいる人たちからすると「やっとか」という気持ちです。
現在では介護利用者からの暴言や暴力は我慢しなさい、となるとどんどん離職率が増加していきます。従って我慢する現場から解決する現場に運営側の意識も変化しつつあります。
ということで、今回は「利用者からの暴力や暴言について、解決方法はあるのか?」について掘り下げてみたいと思います。
介護利用者からの暴言や暴力とは?
では具体例をあげてご紹介しますね。
私物を盗まれたと叫ぶ介護利用者
介護の現場では「物盗まれ」と表現する事もあります。
本当は盗まれていないのに「職員の〇〇さんに勝手に盗まれた」「〇〇さん返して!」と日中ずっと叫ばれ続けます。
その介護利用者を放っておくわけにもいかないので話を聞いたり、説得したりします。
しかし、対応する職員も精神的に疲弊していきます。
ターゲットにされた方は溜まったものではありません。
手を挙げられる
私個人の主観ですが介護利用者から暴力を振るわれるケースは身体介助中が多く感じます。
身体の介助は手が届く範囲じゃないと出来ません。
という事は相手の手が届く範囲でもあります。
服を引っ張られる、髪の毛をつかまれる。
ドンッと押されて倒される事があります。
もちろん私自身に恨みや故意にケガをさせたい気持ちがあるのか無いのか分かりません。
しかし、どういう理由であってもやられた方は良い気持ちはしません。精神的な傷を負ってしまう事もあるでしょう。
噛みつきや物を投げてくる
これも入浴介助や身体介助中、介護利用者様に噛みつかれる事があります。幸いその方は入れ歯を外していたので大事には至りませんでした。
また、自分が履いている衣服を投げられた、枕元に置いてある私物を投げられた経験もあります。
言語機能が低下している介護利用者で上手く言葉が発せられなかった。
その際は何が原因か分かりませんでした、何か気に入らなかった事があったのかもしれません。
解決策はあるのか?
距離を取る
身体介助中が最も介護利用者との距離が近い位置です。
暴力が振るわれそうになった場合速やかに距離を取りましょう。
慣れない時は恐怖で身体が硬直して動かなくなる事もあります。
初めて支援に携わる場合は暴力をふるう介護利用者、暴言をはく介護利用者の情報は教えてくれます。
また、どういう状態だったら暴力をふるってくるかも予め情報を聞いておくと良いでしょう。
そして、暴力を振るわれてしまった場合、即座に先輩または管理者に報告をしてください。
原因を探る
まず、介護利用者が暴言や暴力を振るいたくなる理由が何なのか探る必要があります。理由もなくそのような行いをする事はありません。
嫌な思いをしたのか?環境が気に入らないのか?
何か相手に訴えかける内容があるけど上手に伝わらないからそのような行動に出てしまうのです。
原因を探る事によって刺激する事を未然に防ぐことが出来るかもしれません。
障害特性を理解する
認知症の介護利用者だと感情のコントロールが上手に出来ず暴れる事があります。認知症に関して後に詳しく触れていますのでそちらをご参照ください。
また、老いにより自分自身で自立した生活が送れなくなったショックでうつ病や統合失調症等、精神的な病を患ってしまう方もいらっしゃいます。
その方の性格なのか、それとも障害特性なのかを見極める事により、対応策が見えてくる可能性があります。
男性や地位が高い職員にお願いする。
障害特性出は無く、元々気性が荒い介護利用者もいらっしゃいます。
昔気質で体罰が一般的だった時代を生きてきた年代の方が利用されています。
若い時、仕事柄先輩からの暴力が当たり前だった環境で長年生きてきた方だと珍しい事ではありません。
介護が必要な年配の方といっても、身体がかなり大きい介護利用者もいらっしゃいます。
身体が大きくて気性も荒いとなると威圧感を感じてしまう事さえあります。
そんな時は迷わず男性職員に代わって貰って下さい、もしくは管理者やベテラン介護士など経験豊富な方にも声をかけてみて下さい。
職員の立場で接する態度が違う事があります。
もしも職員が女性だからといって横柄な態度をとるようでしたら遠慮なく対応を変わってもらってください。
ご自身がケガや我慢をしてまで対応する事はありません。
なぜ介護利用者が暴言や暴力をふるうのか?
自尊心が傷ついている、不安を感じている
介護サービスを利用されている方々も元は誰の手も借りず自立した生活を送っていました。
それが老化と共に筋力が衰える、病にかかる等で人の手を借りないと自分で生活できなくなってしまいます。
「昔出来ていた事が出来なくなる、老いを感じる、いつまでも元気でいたい」。
そういう心理状態は私たちもなってみないと本当の辛さや惨めさは理解できません。
介護サービスを利用している方々は全員が現状を受け入れているかというとそうではありません。
本当は介護が必要な介護度だけど「これくらい自分でできる!」と言って何でも自分でやろうとする方もいらっしゃいます。
「お年寄り扱いするな!」と職員を拒否する介護利用者もいらっしゃいます。
そういうやるせない気持ちから暴言や暴力をふるってしまう事があるのかもしれません。
また、徐々に機能が低下していく現実を受け止めて不安を感じてしまい、その感情が態度に出てくる事もあるのです。
感情のコントロールが出来なくなる
脳の機能が低下してくると感情のコントロールが難しくなってきます。
認知症が発症した場合、前頭葉が委縮する事があります。その場合、感情のコントロールが難しくなります。
前頭葉とは感情を落ち着かせる働きや冷静な思考や行動を行う事をコントロールする部分でもあります。
その前頭葉が委縮する事により性格や感情に関係なく怒ってしまうのです。
暴力や暴言は認知症の介護利用者に多くみられる?
認知症の症状は、中核症状と行動心理症状(周辺症状とも言われます)の2種類に分けられます。
ここでは認知症の介護利用者がなぜ暴力的になるのか見ていきましょう。
中核症状とは?
機能や記憶の障害です、判断力が鈍くなる事や物事の認識が出来なくなる事もあります。
今日が何日何曜日か分からない、ご飯を食べたことを忘れてしまう、これも中核症状に当てはまります。
行動心理症状とは?
行動に現れる部分を指します。妄想や暴力、暴言が主にこの症状に当てはまります。
歩き回る「徘徊」などもこの症状になります。
まとめ
はじめに、暴力や暴言は認知症の診断を受けた介護利用者全てに見られる行動では無いという事、あくまで認知症が発症した方に見られる特徴の一つだという事を認識してください。
支援する方の特性や性格、症状を考慮しどのような環境や状況なら不安に思わないだろうとこちら側が考慮してあげる事で安心してサービスを受け入れて下さる可能性も出てきます。
ちょっとした工夫でその方の感じ方が変わってくるかもしれませんね。