世間一般的には介護業界は離職率が高い職種だと思われています。
たしかに言われる通りなのですが“離職率をどうにか減らそう、職員に出来るだけ長く務めてもらおう”と施設内や研修での取り組みが近年顕著に現れてきました。
できたら退職する前に現れる兆候に気づければ退職を未然に防ぐことが出来るかもしれません。
ということで今回は、職員が辞めそうな時に出すシグナルや様子についてご紹介致します。兆候が表れた場合、上司としてどのように対策したら良いのでしょうか?
何が原因で介護士を辞めるのか?
辞める原因は様々ですが、今回は主な理由を挙げてみましょう。
人間関係でもめる
介護の仕事はチームプレーが基本です。
グループホームですとフロアごとでユニットを組んで対応するケースが殆どです。ごく稀に個人で対応する事もありますが、様々な専門職が一人の利用者と関わる包括的な支援が介護の基本です。
その事からも情報共有が非常に大切になります。
編成されたチームで1フロア全体の利用者様のお世話をしますから職員同士の距離感が必然的に近くなります。
また、どうしても苦手な職員と同じチームだとパフォーマンスに影響が出てきます。
他の職員のプライベートに過干渉な方もいらっしゃいますし、お局様と呼ばれる現場に影響力のあるベテランさんも存在する施設もあります。
関わりたくない人間からするととっても厄介な存在です。
時代と言えば時代でしょうか、比較的若い方は干渉される事を嫌う傾向があるのかな、と個人的に感じます。
逆に年配の方は仲良くなろうという気持ちで良かれと思い何でも聞いてきます。
お互い嫌いな訳ではないのに、感覚の違いからズレから苦手意識を感じる事もあります。介護業界は幅広い年齢層の方が働いている施設です。
そのため人間関係でもめて辞めるケースは後を絶ちません。
仕事がきつくて先が考えられない
日勤や夜勤など変則勤務があるのも医療、介護系職種の特徴です。
新卒や若い方は体力もありますし何より羨ましいのは回復力が早い事です。一晩寝ると体力は元通りになります。
しかし年を重ねると慢性的な腰痛に悩まされる事もありますし、寝ても疲れが取れなくなる方もいらっしゃいます。
身体的疲労感はいずれ慣れていきますが「このような生活がこれからも続くのか」と精神的に疲れる事があり結果辞めてしまわれます。
給料が安い
行っている業務に見合わない事に不満を抱き辞めていく方もいます。看護師やケアマネと比べると確かにお給料は安いです。
時折「私たちの方が仕事内容はきついのに」という話を介護職の方から聞くことがあります。何か理不尽さを感じ始めると粗探しを始めやがて辞める口実に発展するケースも少なくありません。
文句を言う方は何に対して理不尽さを感じているのか、知る必要があります。
活躍の場を広げたいから辞める
介護現場に携わっていたが、他の専門職種と仕事をする機会が増えてきて「自分ももっと専門分野で活躍したいので資格を取りたいです」と退職を伝えに来た方もいらっしゃいました。
このように介護職から別の専門職を志すケースも存在します。
辞めそうな介護職員の特徴
ここまでは退職理由についてご紹介しました。ここからは実際に辞めそうな職員の特徴について私の経験を交えてご紹介致します。
言葉が少ない、目が合わない
他の職員と目を合わせようとしない方や急に無口になった様子を見かけると「辞めようと考えているのかな?」と心配になります。
実際やましい事や隠し事があると目が合わないといいますが、まさにその通りです。
嫌いな人と目を合わせない事は良く見受けられますが、施設の誰とも目を合わせない人や急に無口になった人を見ると話は変わってきます。
このような場合、これといった原因は分かりませんが施設に居場所がなくなり退職を考えている事もあります。
昼食を一緒に取らなくなる
介護施設で働く男女比は女性の割合が多いので昼食時はグループで食べる場合があります。これまで共に時間を過ごしてきたのに、徐々に昼食時に外出する事が多くなりました。休憩時間ですから外に食べに出ても良いのです。
ところが突然「会社を辞めます」と辞表を持ってこられたのです。
どうしたのかと話を聞くと、人間関係で悩んでいたとの事でした。
昼食時に外出していたのも関係していたのか確認すると「事務所に一緒にいるのも嫌だった」と相当思い詰めていたそうで、結果としては退職されていきました。
このように普段と違った行動が長く見られる場合、もしかしたら退職を考えているのかもしれません。
愚痴を言わなくなる
会社への愚痴を言っている段階だとまだ辞める様子は無いように感じます。
本当に辞める兆候が出始めると愚痴を言わなくなる傾向が強いのです。
職員の愚痴は会社の改善点のようなものなので、この施設で働きたいけど思うようにならないといった気持ちがあります。
この愚痴が出なくなった時が辞めるサインだと感じています。
「もうこの施設に未練はない、新しい職場を見つけた」といった様子です。
普段口うるさい職員が最近黙っているともしかすると心が離れてしまっている可能性があります。
もしも介護士に辞めそうな兆候が見られたらどうする?
まずは正しい情報を知る
まず情報収集のため、周りの介護職員に話を聞きます。
最近変わったこと無いか?など業務中の様子を聞きます。その他、昼食時や夜勤時の様子も聞きます。
その方が周りに相談できる方でしたら大体ここで「最近新しい職探している」「仕事辞めようかなと悩んでいる」と掴めます。
上司としての対応策は?
話を聞く
介護業界では職員のメンタルケアも含めた定期面談が施設長の業務として位置づけられています。辞めそうな方との関係構築が出来ているのであれば話をしてくれるでしょう。
周りの力を借りる
定期面談等で話を聞いたうえで辞めそうな方の先輩や上司に「フォローしてあげてほしい」と伝えます。
それとは真逆に辞めたい原因が上司や先輩との人間関係だとしたら、一度その方々と面談を行います。
話を聞いた上で、関係構築について無自覚なら、直接その方が悩んでいる事をお伝えします。
また関係が悪化していると自覚している方なら悪化した原因を聞きます。お互い意識しすぎてギクシャクし、結果的に険悪になったケースは本当に良くあります。
女性同士なら特に多く、脳内で勝手なイメージを作り出しそれと葛藤し、リアルでもイメージ内の人だと思い込んでしまうのです。
故に一度現実を伝えます。
辞める前に対応できそうな事は対応する
辞めそうな前兆があれば出来るだけ辞めないように配慮をする施設長もいらっしゃいます。
しかしその都度対応していると必ず不公平さを申し出てくる方が出てきます。
辞めそうな方の事だけを考えて配置転換やスケジュール変更をしてしまうと他の職員に対してフェアではなくなるので難しい所ではあります。
最終的にどこまで対応するかは施設長の裁量によって決まります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
介護施設は利用者と職員を含めると非常に密度が高い環境です。
必然的に人間同士の距離感も近くなっていきます。施設長や管理者は常に一緒にいるわけではありませんので自分が知らない所でどのような事が起こっているのか不明な点も沢山あります。
実際職員の退職を止める事は中々難しく、話をしてくれる段階の時にはもう気持ちが固まっている事が殆どです。従って悩みの早期発見が重要になってきます。
他の職員とお話をしてどのような事で悩んでいるのかを定期的に把握する事が退職を未然に防ぐ第一歩と言えるでしょう。